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2004.07.01

6/25 G・M・B

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「本日は、お足元の悪い中、お越しいただきましてありがとうございました。」

ギターの高さに合わせてセッティングされたマイクにかがみ込むようにして向かい、明らかに言い馴れないといった風で挨拶。照れ隠しなのか、リードギターを担当する圭吾クンの口調はどことなくぶっきらぼうだ。彼の背後にある大きな窓の向こうを、車のライトが雨を照らして走り去って行く。

「少し時間が遅くなっちゃいましたが、次が最後の曲です。リクエストをいただきましたので、チック・コリアの”スペイン”をやりたいと思います。」

ステージ上にいるメンバー全員の表情が引き締まった。一方客席は、一体誰がいつの間にリクエストしたのかといぶかしがる声でざわついていた。ライブ中、カウンター席にいた女性から1曲リクエストがあったのだけど、その時はそれに応えることなくライブは続けられてしまった。マスターがカウンターの中からリクエストした「007/ロシアより愛を込めて」は前回のライブでも演奏されたもので、それはその後演奏された。しかし「スペイン」をリクエストする声は、少なくともライブ中には誰からもなかったのだ。

そんな中、私ひとりだけがついつい笑顔になってしまった。ものすごく嬉しかったのだ。実はこれをリクエストしたのは私だった。この曲は、圭吾クンが最初にリズムギター担当の瀧淵クンと組んで活動することになった、そのきっかけともなった曲なのだそうだ。しかも、その後スパニッシュギターを専門とするようになった彼にはうってつけの曲。かなり難しい曲であることはもちろんだけど、こういった派手な曲はライブでも映えるだろう。そんな経緯から前回のライブで演奏されることを密かに楽しみにしていた私の思惑通りにはいかず、それなら次回にとリクエストしていたのだった。今回のライブでは、前回も演奏した同じチック・コリアの曲は早々に演奏されたのにも関わらず「スペイン」は中々演奏されず、また繰越なのかなぁとほとんど諦めていたそんな矢先だった。

圭吾クンの左手が、ものすごいスピードでフレットを動き回る。瀧淵クンの右手から、スパニッシュギター独特の奏法で激しくリズムが刻まれる。ゲストプレイヤーとして演奏に柔らかさを加えていたsotaクンのバイオリンが、情熱的な音を奏で始める。ようやくウッドベースにも慣れて笑顔が出ていた藤原クンのベースも、徐々に熱を帯びてくる。

その時、それまでざわついていた店内がどうだったか、一切記憶にない。覚えているのはステージ上にいた4人の若いミュージシャン達が、力いっぱい演奏する姿だけだ。

「僕たち、全員23歳なんです。」

ライブが始まってすぐ、MCの中にそんな言葉があった。ジプシー・ジャズという、ジャズの中でも言わばマニアックなジャンルを演奏するミュージシャンは、少しずつだが増えているようだ。しかしその大半は、他のジャンルの音楽をさんざん経験した後にこの音楽にたどり着いたといった感じのベテラン組が多く、そんな中でこの若いバンドはかなり異色と言っていいだろう。その上、23歳という年齢以上にGMBのメンバーは比較的顔立ちが若く、ルックスもいい。特にベースの藤原クンや、この日演奏された「マイナー・スウィング」でスペシャル・ゲストとしてリズムギターを担当したタッキーS木クン(東京)

もちろん仮名(笑)。彼は滝沢秀明クンによく似ているのだ。ここでのルールとしてミュージシャンは基本的に本名なのだけど、書くことについて本人に了解をもらおうとしたら、”事務所を通して下さい”などと照れ笑いされてしまったので、仕方なく一般扱いの仮名で掲載です(爆)。

が入ったりすると、イケメンどころかジャニ顔バンドだ。
もちろん、若くてルックスがいいだけではない。「それちょっと早いんじゃないのカルテット」とふざけてバンド名を紹介するほど早いテンポの曲が多く、その演奏レベルの高さはかなりのものだ。特にスタンダード中のスタンダードである「スウィングしなけりゃ意味がない」などは、前回のライブで私が「スウィングしているヒマがない」と思わず命名したほどのスピードで演奏されるローゼンバーグ・トリオ・スタイルだ。バンドを引っ張る圭吾クンのずば抜けた演奏テクニックには定評があり、またメンバーそれぞれの成長振りには目を見張るばかりか呆れるほどである。特に今回は、瀧淵クンが加入したばかりだった前回以上に彼のスパニッシュギターをフィーチャーしたアレンジの曲が多く、バイオリンのsotaクンも加わってますます面白くなってきた。

そんな二人の演奏によって今回大きく生まれ変わったのが、圭吾クンのオリジナル曲である「コバルス」である。繊細で憂いを帯びた旋律に情熱を秘めたオリジナルバージョンも大好きなのだけど、それが更に熱く情熱的な曲になっていた。彼らが主に演奏しているジャズのスタンダート・ナンバーは、言うまでもなく何十年もの間に多くのミュージシャンたちによって繰り返しアレンジを施され、何度も何度も生まれ変わって生き続けてきた名曲ばかりだ。この曲は、そういった名曲たちと肩を並べる素質のある曲なのかもしれない。

演奏時間が長引いてしまい、2曲も予定していた曲を削りながら応えたアンコールは、「オール・オブ・ミー」だった。ゆったりしたリズムで始められた演奏は、途中からスピードを上げて演奏され、最後のフィニッシュまで息を呑むような充実感があった。

終演後、次回のライブは8月にという話がマスターからあった。圭吾クンの自宅から程近いこのお店は、頻繁にジャズのライブが行われているそうだがいわゆるライブハウスではなく、圭吾クンの家で御用達のレストランだ。前回のステージ前にリハを聴いてその演奏にかなり驚いていたマスターは、すっかり彼らの強力な応援団となったようだ。

8月には他のお店でもライブの予定が入ったそうで、私もますます忙しくなりそうだ。

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